多胎妊娠のリスクと対策|不妊治療で気をつけるべきポイント

不妊治療の過程で、多胎妊娠(双子や三つ子以上の妊娠)が起こる可能性が高くなることをご存知でしょうか?特に、体外受精や排卵誘発剤を使用した場合、多胎妊娠の確率が上がるため、リスクと対策をしっかり理解しておくことが重要です。

こちらの記事では、多胎妊娠のリスクと、妊娠を安全に進めるための対策について詳しく解説します。

1. 多胎妊娠とは?

多胎妊娠は、1回の妊娠で2人以上の赤ちゃんを授かることを指します。

・一卵性双生児:1つの受精卵が分裂して生じる。遺伝情報が同じ。
・二卵性双生児:2つの卵子がそれぞれ受精して生じる。遺伝情報は異なる。
・三つ子以上の多胎妊娠:自然発生は稀ですが、不妊治療(排卵誘発剤や体外受精)によって増加しています。

不妊治療と多胎妊娠の関係
・排卵誘発剤や複数胚移植によって、多胎妊娠の確率が上昇します。
・日本では、体外受精で移植する胚の数を制限するガイドラインがあるため、適切な管理が求められます。

2. 多胎妊娠のリスク

【母体へのリスク】
⚫︎ 妊娠高血圧症候群
・高血圧・むくみ・蛋白尿などが発生しやすい。
・重症化すると母体や胎児の命に関わる可能性があります。

⚫︎ 妊娠糖尿病
・インスリンの働きが悪くなり、血糖値が上昇。
・胎児が大きくなりすぎることで分娩時にリスクを伴う場合があります。

⚫︎ 早産・流産
・子宮への負担が大きく、妊娠37週未満で早産するリスクが増加。
・早産児は低出生体重児となりやすい。

⚫︎ 帝王切開の確率増加
多胎妊娠では自然分娩が難しく、帝王切開になるケースが多い。

【胎児へのリスク】
⚫︎ 低出生体重児
・胎児1人あたりの成長が制限され、出生時体重が低くなる傾向があります。
・呼吸障害や発達遅延などのリスクが伴う場合があります。

⚫︎ 双胎間輸血症候群(TTTS)
・一卵性双生児で胎盤を共有する場合に発生。
・血流バランスが崩れ、一方の胎児に血液が過剰供給され、もう一方には不足することで命の危険があります。

⚫︎ 臓器発育不全
多胎児は単胎児よりも未熟児になるリスクが高く、NICU(新生児集中治療室)での管理が必要になるケースもあります。

3. 多胎妊娠を防ぐための対策

① 胚移植数を制限する(体外受精の場合)
・日本では原則として「1回の胚移植につき1個」が推奨されています。
・特例として35歳以上や着床失敗経験者には2個まで移植するケースもありますが、多胎妊娠リスクを考慮して慎重な判断が求められます。

② 排卵誘発剤の適切な使用
・排卵誘発剤(クロミフェン、HMG注射など)は、複数の卵胞を刺激するため、多胎妊娠リスクを上昇させる場合があります。
・医師と相談しながら使用量や投与期間を調整し、過剰な卵巣刺激を避けることが重要です。

③ 妊娠後の適切な管理
・定期的な妊婦健診を受けてリスク管理を徹底します。
・栄養バランスを意識した食事で貧血や妊娠糖尿病を予防します。
・安静時間を増やし、早産リスクを軽減します。

5. まとめ

多胎妊娠は不妊治療によって起こりやすいですが、その分母体と胎児にはさまざまなリスクがあります。しかし、適切な治療選択と慎重な管理によってこれらのリスクは最小限に抑えることが可能です。
また、多胎妊娠になった場合でも、医師との密な連携とサポート体制を整えることで、安全かつ健康的な出産・育児につなげることができます。